20200918

非冬眠動物における冬眠様状態の誘導

砂川 玄志郎 博士

国立研究開発法人理化学研究所 生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト

【要旨】

冬眠中の動物は正常時と比べて数%まで酸素消費量が低下し、外気温よりも数度高い程度の低体温を呈するが、何ら組織障害を伴うことなく自発的に元の状態に戻ることができる。このような“制御された低代謝”は、疾患によって組織が受けるダメージを回避できる可能性があり臨床応用が期待されている。しかし、冬眠のメカニズムはほとんど分かっていない。冬眠研究を困難にしている理由の一つが、通常使用される実験動物であるマウス等が冬眠をしないことであった。
本研究では、マウスの脳(視床下部)の一部に存在する神経細胞群を興奮させると、マウスの体温・代謝が数日間にわたって著しく低下することを発見した。この神経細胞群をQ神経(Quiescence-inducing neurons : 休眠誘導神経)と名付け、このQ神経を刺激することにより生じる低代謝をQIH(Q neurons—induced hypometabolism)と名付けた。

QIH中のマウスは動き・摂食がほぼなくなり、体温セットポイントが低下するため著しい低体温を呈する。行動解析・組織学的解析ではQIHの前後で異常が見らなかった。本研究によって、哺乳類に広く保存されているQ神経を選択的に刺激することで、非冬眠動物に冬眠様状態を誘導できることが明らかとなり、人間でも冬眠を誘導できる可能性が示唆された。

 

日時: 2020年9月18日(金) 16:00~17:30
場所: Zoom
連絡先: 理学系研究科 生物科学専攻 生物情報科学科
黒田 真也(skuroda AT bs.s.u-tokyo.ac.jp)

参加希望の方は
info.kuroda-lab [at] bs.s.u-tokyo.ac.jp
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