20190517

「クライオ電子顕微鏡を、あなた自身の研究に生かすには?」

吉川 雅英 教授

東京大学・大学院・医学系研究科・生体構造学分野

【要旨】

医学や生命科学の発展において、顕微鏡は非常に重要な役割を担ってきました。これまでにも数多くのノーベル賞が顕微鏡技術に授与され、2017年にはクライオ電子顕微鏡に対してノーベル化学賞が授与されたことからも、それが伺えます。分子レベルから細胞レベルの各レベルで「かたち」は、今や医学・生命科学に不可欠な情報となっています。
一方、クライオ電子顕微鏡を用いた研究は、コストが掛かること、技術が特殊であることなどの理由で、その利用は少数の研究室に限られていました。しかし、クライオ電顕の有用性が広く認識され、2017年度にAMED創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業の一環として、共用施設としてのクライオ電子顕微鏡が整備されました。2018年には、東京大学におけるクライオ電子顕微鏡共用施設が本格稼働を開始し、様々な成果が得られつつあります。

本セミナーでは、この施設で構造解析されたタンパク質である細胞の膨張を感知する陰イオンチャネルLRRC8A(Kasuya et al. 2018)、免疫グロブリンIgMの構造(Hiramoto et al. 2018)、および、細胞内小器官である繊毛の構造(Owa et al. 2019)などの例を示しながら、どのようにすればクライオ電子顕微鏡を自身の研究に行かせるのかを議論したい。

参考文献
Hiramoto, Emiri, Akihisa Tsutsumi, Risa Suzuki, Shigeru Matsuoka, Satoko Arai, Masahide Kikkawa, and Toru Miyazaki. 2018. “The IgM Pentamer Is an Asymmetric Pentagon with an Open Groove That Binds the AIM Protein.” Science Advances 4 (10): eaau1199. https://doi.org/10.1126/sciadv.aau1199.
Kasuya, Go, Takanori Nakane, Takeshi Yokoyama, Yanyan Jia, Masato Inoue, Kengo Watanabe, Ryoki Nakamura, et al. 2018. “Cryo-EM Structures of the Human Volume-Regulated Anion Channel LRRC8.” Nature Structural & Molecular Biology 25 (9): 797–804. https://doi.org/10.1038/s41594-018-0109-6.
Owa, Mikito, Takayuki Uchihashi, Haru-Aki Yanagisawa, Takashi Yamano, Hiro Iguchi, Hideya Fukuzawa, Ken-Ichi Wakabayashi, Toshio Ando, and Masahide Kikkawa. 2019. “Inner Lumen Proteins Stabilize Doublet Microtubules in Cilia and Flagella.” Nature Communications 10 (1): 1143. https://doi.org/10.1038/s41467-019-09051-x.

日時: 2019年05月17日(木) 17:00~18:30
場所: 理学部3号館4F 412室
連絡先: 理学系研究科 生物科学専攻 生物情報科学科
黒田 真也(skuroda AT bs.s.u-tokyo.ac.jp)