クロマチン組成変化から考える細胞分化能制御 ~トランスクリプトミクスの新たな展開~
大川 恭行 博士
九州大学生体防御医学研究所
【要旨】
骨格筋分化の過程では、ゲノム上に存在する2-3万もの遺伝子から特定遺伝子の発現が選択され、形質を獲得に必要なmRNAが転写される。この選択的な遺伝子発現はクロマチン構造により制御されている。遺伝子発現の過程で、まず特定の種類のヒストンが選択的に遺伝子の制御領域(プロモーター、エンハンサー等)に取り込まれる。その後時系列に従い、個々の様々なヒストン修飾からクロマチン高次構造変換に至る一連のクロマチン構造制御が行われる。しかしながら、その起点であるヒストン選択の機構については未だ不明な点が多い。従来3種のヒストンH3H3.1/H3.2, H3.3知られていたが、2015年に我々はマウス、ヒト新規H3バリアント(亜種)遺伝子群13種(ヒト3種)を新たに同定した。この成果は、生体内での遺伝子発現には、より複雑かつ緻密なヒストンH3の選択機構が関わっている可能性を示唆している。以来、新規ヒストン遺伝子のノックアウトマウスを網羅的に作成し、各ヒストンバリアントの機能解析を進めてきた。現在までに骨格筋組織に高発現するヒストンH3バリアントが骨格筋再生能維持に関わっていることを見出している。本講演では現在までに得ている知見とともに、骨格筋組織内の少数細胞の遺伝子発現制御解析を可能にしたトランスクリプトミクス技術も合わせて紹介したい。
日時: 2018年07月19日(木) 17:00~18:30
場所: 理学部3号館4F 412室
連絡先: 理学系研究科 生物科学専攻 生物情報科学科
黒田 真也(skuroda AT bs.s.u-tokyo.ac.jp)