オートファジーの膜動態と生理的意義
水島 昇 博士
東京大学 大学院医学系研究科
【要旨】
オートファジーは多くの真核生物に備わっている細胞内分解システムである。オートファジーでは、細胞質の一部がオートファゴソームに取り囲まれた後にリソソームへと輸送され、分解される。酵母を用いた遺伝学的研究をブレークスルーとして、オートファジーの分子機構と生理的機能の研究はこの約20年間でめざましい発展を遂げた。オートファジーの役割は、アミノ酸などの分解産物を調達するための栄養素のリサイクルと、細胞内の品質管理や浄化の二つに大別される。後者は、特に神経細胞などの長寿命細胞で重要であり、家族性パーキンソン病などのヒト神経変性疾患においてオートファジー関連因子の変異が発見されている。一方で、オートファジーの分子機構の解析も進んでいる。これまでの主体であったオートファゴソーム形成過程に加え、最近はオートファゴソームの成熟過程やリソソームとの融合過程のメカニズムの研究も進展している。講演では、オートファジー膜動態の未解決課題や脊椎動物で新たに見つかった生理機能なども紹介したい。
日時: 平成30年05月11日(金) 17:00~18:30
場所: 理学部3号館4F 412室
連絡先: 理学系研究科 生物科学専攻 生物情報科学科
黒田 真也(skuroda AT bs.s.u-tokyo.ac.jp)