20250925

生まれと育ちを超えて:確率的ノイズはエピジェネティック・ランドスケープを変化させるか?

河口理紗  博士

東京大学 大学院薬学系研究科・准教授

【概要】

 遺伝的なバックグラウンドは個体の形質の多様性、いわゆる個性を生み出す主要因であることが知られているが、一方で一卵性双生児のように遺伝的に同一の個体であっても、際立って異なる表現型を示すことがある。こうした違いは、まれな体細胞変異や環境の揺らぎ、あるいは発生初期における確率的効果に起因する可能性が考えられる。ゆらぎの原因を特定することは、非遺伝性の疾患のメカニズムや遺伝性疾患における不完全浸透を説明するために不可欠だが、既存のモデル生物やヒトのコホートを使った研究では、特に環境要因などの交絡因子の影響を除くことは困難であった。そこで我々が着目したのが、遺伝的に同一な四つ子を産むココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)である。同一環境下で育てられた四つ子のアルマジロの経時的オミクス解析により、遺伝要因や環境要因の厳密な制御下にあっても、個体の個性を識別可能なエピジェネティックなパターンが存在し、さらにそれらが個体の形質差に影響を及ぼしうることを統計モデルと機械学習技術によって明らかにすることに成功した。最後に現在進行中のプロジェクトである、多能性幹細胞における細胞集団のゆらぎと、そこから生み出される確率的な細胞運命決定の予測に関しての議論を紹介する。

日時: 2025年9月25日(木) 14:00~15:30
場所: Zoom と理学部 3 号館412 号室
連絡先: 理学系研究科 生物科学専攻 生物情報科学科
黒田 真也(skuroda AT bs.s.u-tokyo.ac.jp)

学外で参加希望の方は
info.kuroda-lab [at] bs.s.u-tokyo.ac.jp
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